南三陸ホテル観洋 (南三陸町/宮城県)~震災・語り部バスとウミネコの宿

南三陸ホテル観洋
餌欲しさにホテルの部屋の窓辺に遊びに来るウミネコ

餌欲しさにホテルの部屋の窓辺に遊びに来るウミネコ

語り部バスで津波の悲劇を語り継ぐ伊藤文夫さん

語り部バスで津波の悲劇を語り継ぐ伊藤文夫さん

千年に一度の災害と言われる東日本大震災から10年余り。この南三陸を襲った大津波の恐ろしさを実体験をもとに伝え、この悲劇を風化させないための語り部バスを毎日運航しているホテルがあります。「南三陸ホテル観洋」。この団体客も泊まる大型温泉ホテルに泊まったのは、語り部バスツアーが目的でした。
朝8:45分、ホテル前を大型バスで出発、約1時間のツアーです。語り部はこのホテルに50年以上勤務してきた伊藤文夫さんです。バスで津波の被害に遭った場所を巡り、当時の写真を見せながらの説明は、朴訥とした口調だからこそ余計にリアルで、胸に迫るものが多くありました。
まず向かったのは海抜2m、海から250mという日本一津波に弱いと呼ばれた戸倉地区の戸倉小学校。その隣には保育園もありました。当時校内にいた全児童を裏山に避難させて全員が助かったというエピソードにホッとしました。学校は流され、今は海抜60mの地点に建っています。
避難はしても、皆が大変な一夜を過ごしたのです。3月なので小雪がちらつく厳寒の夜を保育園児を助けながら焚き火のもとで過ごした児童たち。卒業式を目前にしていた6年生23名全員が、練習していた「旅立ちの日に」を合唱して年下の子供たちを励ましたエピソードも胸をうたれます。後になって8月、日本一遅い卒業式を全員で無事できたことを聞くと涙が出ました。
一方、伊藤さんの家がある集落は壊滅的な被害で、町は1時間で無くなったそうです。津波の強さ、怖さを思い知らされたそうです。家族との連絡もなかなか取れず、心配した挙句、奥さんと一瞬電話が繋がったときは、人目もはばからず号泣したそうです。本当によかったです。

復興のさんさん商店街にある写真家の震災展示館

復興のさんさん商店街にある写真家の震災展示館

当時327名の高齢者が集まって会合が開かれていた4階建てのビル高野会館。地震の後、家に帰ろうとするお年寄りを会館の職員が「生きたかったら残れ!」と止まらせて屋上へ誘導。津波は屋上までやって来ましたが、かろうじて全員を助けることができたとか。このビルは震災伝承施設のひとつに指定され保存されています。半面たくさんの犠牲者が出た話も多くありました。防災対策庁舎も悲劇の現場として保存されていました。
伊藤さんの知り合いや友人も49人が流され、一家全員というのも5家族あったそうです。うち1軒は兄弟のように親しかった後輩一家。東京で働いていたためひとり難を逃れた20代の娘さんは、駆けつけてきたものの家族全員を亡くし、家も流されていたのです。お母さんの遺体が見つかったものの、周りの知り合いは行方不明が多いため見つかったことも言えず、ひっそり1人で火葬場でお母さんを荼毘に附していたそうです。そこへ駆けつけた伊藤さんに、抱きついて泣き崩れた娘さん。
・・・こんな悲しいことは二度と起こってほしくない。だから防災をしっかりしなくてはいけないのだと伊藤さんは繰り返します。そしてこうしたことを決して風化させてはいけないのだと、毎日毎日バスに乗って語り部を続けているのです。私たち一人一人も伝承していくべきだと切に感じたツアーでした。
そしてこの語り部バスツアーは2017年に第3回ジャパン・ツーリズム・アワード大賞を受賞したそうです。

旅館の夕食で出たお刺身はどれも新鮮で美味しい

旅館の夕食で出たお刺身はどれも新鮮で美味しい

この旅館は部屋数も多いかなり大型のホテルだけあって、オーシャンフロントの大浴場や露天風呂も多く、温泉気分も味わえます。食事は大宴会場で、舞台まであって昭和のムードが漂っています。目の前が海だけあって、新鮮な海鮮がお膳に並びます。今回は鮑の踊り焼プランという宿泊プランだったので、生ウニや刺身と共に、バター焼きの新鮮な柔らかい鮑を頂きました。
部屋も古臭い感じのレトロな風情だし、部屋のお風呂は昔住んでいた東京のマンションとそっくりそのままの懐かしいユニットバスで、全く同じだったのに郷愁を覚えたり・・・。
ここでは東館の海側の部屋を取ることがおすすめです。なぜなら窓際の柵に沢山のウミネコが遊びに来るからです。ウミネコの餌としてかっぱえびせんが売店でも売られています。それを知っているウミネコは、柵にとまってミャーミャーと盛大に叫んで餌をねだります。一羽にやるとさあ大変!10羽以上が集まって来て、その鳴き声は凄まじいもの。見た目は似ていてもカモメと違ってこちらは猫みたいに激しく泣きます。そして大口を開けてえびせんを丸呑みするのです。それも空中に投げると羽ばたいてジャンプしてキャッチするという頑張りを見せます。柵には皆順番にとまり順番に餌をもらってまた並び直しますが、中にはちゃっかり餌を食べた後も居座って何度ももらうお調子者も登場。それも憎めない可愛さに、もうメロメロ。ウミネコって可愛いと知りました!
昭和のムード漂う旅館ですが、「語り部バス」「ウミネコ」「オーシャンフロントの露天風呂」など魅力ある素材が満載の宿。小中学生の子供さんがいる家族などは、社会勉強を兼ねて滞在してみるのもお薦めです。
(2021年6月訪問)

旅館名南三陸ホテル観洋
住所宮城県本吉郡南三陸町志津川黒崎99−17
TEL0226-46-2442
お風呂大浴場 露天風呂
予算2名1室の場合1人14000円~(東館の海側の部屋宿泊 2食、語り部バスツアー、アワビの踊り食い付プラン)
露天風呂付客室なし

 

ペンギン案内人2号/井原 三津子

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