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「絵巻のような平面美」アジャンターと「模型のような立体美」エローラの旅 後編

躍動感のあるシヴァ神の彫刻が印象的なヒンドゥー教窟

躍動感のあるシヴァ神の彫刻が印象的なヒンドゥー教窟

日本で「寺院」と聞くと、京都のお寺として代表的な清水寺や、巨大な大仏が有名な奈良の東大寺など、立派な本殿や門を構える建造物を想像する方が多いかもしれません。では、仏教発祥の地であるインドはどうでしょう?代表的な聖地ブッダガヤにある寺院には、複雑な彫刻が施された煉瓦造りの主塔がそびえ建ち、日本の建物とは全く異なる姿となっています。そんなインドの寺院の中でも、今回は世界遺産となっている2つの「石窟寺院」をクローズアップします。前編はアジャンターの石窟寺院、後編はエローラの石窟寺院をご紹介します!

エローラの石窟寺院とは?

まさに芸術級!圧倒的な立体美

まさに芸術級!圧倒的な立体美

記事前編では、平面的要素が印象的な仏教石窟寺院アジャンターの紹介をしました。後編は、立体的な要素の強いエローラについて深堀りします。同じ石窟寺院でも、この2つには大きく異なる部分があります。まず年代ですが、紀元前から5世紀頃までを中心に栄えたアジャンターに対し、エローラは6世紀以降の遺跡です。インドにおける仏教衰退期の石窟群を見られるため、アジャンターと比較しながら見学すると理解が深まります。

アジャンターよりも精密で曲線も美しい浮彫

アジャンターよりも精密で曲線も美しい浮彫

次に宗教。アジャンターは仏教寺院でしたが、エローラは仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の3つの宗教が共存しています。
そして遺跡の規模。エローラはアジャンターよりも敷地が広く、その中に寺院がいくつも点在しています。34もの石窟寺院が残っていますが、全ての石窟を見学するのは難しいため、主要な部分をピックアップして紹介します。

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仏像が優位になった証?第10、12窟<仏教石窟>

ストゥーパを威圧するような仏像の圧倒的存在感

ストゥーパを威圧するような仏像の圧倒的存在感

エローラに34ある石窟のうち、第1~12窟までが仏教窟、第13~29窟までがヒンドゥー教窟、そして第30~34窟までがジャイナ教窟です。
まずは仏教石窟。エローラの仏教窟のほとんどはヴィハーラと呼ばれる僧侶の住居ですが、唯一第10窟はストゥーパを祀るチャイティヤ窟です。ここで注目すべきは崇拝対象のストゥーパよりも前面に鎮座し、存在感を放つ仏像。アジャンターでは球体の方が強い印象だったはず。仏教文化の過渡期に、ストゥーパよりも仏像の優位性が高くなったことがわかります。

整然と並ぶ過去七仏はなんだか皆スリムに見える

整然と並ぶ過去七仏はなんだか皆スリムに見える

近くの12窟は僧侶たちが暮らしたヴィハーラ窟で、3階建ての古いアパートのような雰囲気です。3階には「過去七仏」という大乗仏教の考えを表した仏像群があり、開放的な空間ながらも仏教の世界に覆われているような不思議な雰囲気が漂っています。

エローラのハイライト!第16窟<ヒンドゥー教石窟>

中庭に建つスタンバ(石柱)は高さ約17メートル

中庭に建つスタンバ(石柱)は高さ約17メートル

エローラを代表する見どころです。初めてこの異様な存在感を放つ遺跡を見たとき、とても興奮したことを覚えています。「カイラーサナータ寺院」という名前のヒンドゥー教寺院です。仏教の衰退が進む中、反対に広がりを見せたヒンドゥー教。仏教寺院との大きな違いは、僧侶が暮らすヴィハーラ窟が存在せず、修行目的というよりは神々を祀る祈りの場として造られたという点です。

ユニークな彫刻が多いのもヒンドゥー教寺院の特徴

ユニークな彫刻が多いのもヒンドゥー教寺院の特徴

岩山をくり抜いて洞窟状にしたアジャンターと大きく異なり、巨大な岩山を切り開くというダイナミックさがヒンドゥー教らしくて好きです。ヒンドゥー教には多くの神が存在しますが、カイラーサナータ寺院に祀られているのは中でも重要な破壊と創造を司るシヴァ神。寺院奥の本殿に、シヴァ神を象徴するリンガが安置されており、現在でもヒンドゥー教徒の崇拝対象となっています。

宇宙規模の壮大な寺院!第16窟<ヒンドゥー教石窟>

象たちが支えているものは・・・宇宙?!

象たちが支えているものは・・・宇宙?!

引き続き第16窟です。至るところに細やかな彫刻が刻まれていることに驚きますが、特に寺院外側の浮彫は必見。中庭のように開けた空間の中央にナンディー堂・前殿・本殿が並んでおり、外壁の基壇部分には等間隔に揃った象の姿が。この象は「宇宙を支えるゾウ」と呼ばれ、この寺院がシヴァ神の住まいであり、全宇宙であることを象徴しています。思った以上にスケールの大きな設定ですね。

これを手彫りで造ったことなど到底信じられない

これを手彫りで造ったことなど到底信じられない

本堂の周りの壁にも、『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』等、古代インド叙事詩の場面が表現された美しい浮彫があります。そして天気が良ければ寺院全体を崖上から望むことも出来ます。上から見ると、この寺院の異様な規模と精巧さを改めて認識出来るでしょう。また、他のヒンドゥー教窟でもユニークな神々の像を見ることが出来るので、是非立ち寄ってみたいものです。

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一目でわかる独特な彫刻!第32窟<ジャイナ教石窟>

同じ国の中でまったく異なる宗教が生まれる不思議

同じ国の中でまったく異なる宗教が生まれる不思議

北の外れに位置するジャイナ教寺院群。ジャイナ教は仏教と同時代に、ヴァルダマーナを開祖として栄えた宗教です。大きな違いは、境地に至るために苦行を否定する(仏教)か、肯定する(ジャイナ教)かという考え方です。第32窟はジャイナ教寺院最大のみどころです。ジャイナ教の教祖は、所有物全てを捨てて修行をしたことから、寺院内の彫刻は全裸のものがほとんどなので、簡単に見分けられるという特徴があります。

立体感が際立つ第29窟(ヒンドゥー教窟)の浮彫

立体感が際立つ第29窟(ヒンドゥー教窟)の浮彫

今回は、似て非なる2つの石窟寺院を紹介しました。繊細な壁画や仏教文化の変遷を絵巻物のように学ぶならアジャンター、異なる宗教建築の迷路でダイナミックな立体模型感を楽しむならばエローラへ!無宗教を自覚する日本人ですが、だからこそ確固たる考えに固執せず、多様な考え方を受け止められることは、とてもラッキーなことだと思います。

 
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